カスハラ対策の義務化と意識調査の背景
厚生労働省の職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)によると、過去3年間で顧客からの著しい迷惑行為の相談があったと回答した企業は約3割に達し、前回調査から8.4ポイント増加しています。2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法では、カスハラ防止のための雇用管理上の措置が事業主の義務として定められ、2026年10月1日に施行される予定です。
企業側の対策が制度として整えられる一方で、Job総研が過去に実施した調査(2024年 ハラスメントの境界線調査)では、ハラスメントの境界線を「正しく認識している」と答えた人は3割弱にとどまり、無意識のうちに加害者になることへの不安の声もあがっていました。このような状況の中で、Job総研はサービスを利用する「客側」がどのような不満やカスハラに対する意識を持っているのかを明らかにするため、今回の調査を実施しました。
【調査概要】
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調査対象者:現在就業中のJobQ Town(ジョブキュータウン)登録者
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調査条件 :全国/男女/20~50代
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調査期間 :2026年8月12日~8月17日
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有効回答数:463人
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調査方法 :インターネット調査
お店への不満経験とその理由
過去にお店や企業、サービスやその提供物などに不満を感じたことがあるかを聞いたところ、「あり」と回答した人は77.1%に上りました。不満を感じた理由としては、「店員・担当者の態度」が64.4%で最も多く、次いで「説明や案内が不十分」が41.5%、「商品・サービスの品質」が38.4%となりました。

不満を感じた際の感情と実際の対応
不満を感じた際の感情については、「納得できずモヤモヤする」が54.6%で最多となり、「損をした感覚になる」が45.4%、「冷静になろうと思う」が35.3%と続きました。
実際の対応としては、「何もせず、そのまま利用した」が35.3%で最も多く、次いで「家族・友人などに話した」が35.0%、「自分の中で消化した」が31.7%となりました。

不満を伝えたかと伝えない理由
不満を相手側に伝えたかについては、「直接伝えた」が37.5%で最多である一方、「不満はあったが我慢して伝えなかった」が29.4%、「伝えようとしたが、やめた」が14.6%となり、不満を伝えなかった層は合計44.0%に達しました。
不満を伝えなかった理由としては、「時間や手間がかかると思った」が42.7%で最も多く、次いで「面倒な客と思われたくなかった」が32.5%、「言っても改善されないと思った」が31.8%となりました。

伝えた理由と無自覚の可能性
不満を相手に伝えた理由としては、「改善してほしかった」が59.5%で最多となり、次いで「納得できなかった」が41.5%、「正しい対応をしてほしかった」が32.5%となりました。
また、自身が気づかないうちに「カスハラにあたる言動」をしているかもしれないと思うかについては、「思う派」が37.8%を占め、無自覚なカスハラへの懸念が示されています。

意見を伝えてよい場面と控えたい言動
相手に不満や意見を伝えてもよいと思う場面としては、「明らかなミスをされたとき」が61.6%で最多となり、次いで「金銭的な損失があったとき」が59.6%、「誠意のない対応をされたとき」が39.5%となりました。
一方で、不満があっても「これはやらない方がいい」と思う言動としては、「自分だけへの特別な対応を企業側に求める」が36.5%で最多となり、次いで「SNS(X、Instagram等)に書き込む」が36.1%、「その場で解決するまで帰らない・引き下がらない」が33.5%となりました。

不満を伝えることへの賛否
企業や店舗に不満を伝えることへの賛否を聞くと、「賛成派」が87.2%と大多数を占めました。賛成の理由としては、「問題を改善してほしい」が54.7%で最多となり、次いで「正当なサービスを受けたい」が44.3%、「同じことが他の人にも起きないようにするため」が42.3%となりました。

調査まとめ
今回のJob総研の調査では、約8割の人が企業やサービスへの不満を経験しているにもかかわらず、その不満を相手に伝えなかった人が4割を超える実態が明らかになりました。不満を伝えなかった理由としては、「時間や手間がかかると思った」が最も多く、手間や周囲からの見られ方を意識する傾向がうかがえます。
一方で、不満を伝えること自体には約9割が賛成しており、「問題を改善してほしい」「正当なサービスを受ける権利がある」といった理由が上位に挙がっています。意見表明への肯定感と実際の行動との間には、依然として距離があると言えるでしょう。
さらに、全体の約4割が自身も気づかないうちにカスハラにあたる言動をしているかもしれないと考えています。客として「やらない方がいい」と思う言動として「自分に向けた特別な対応を求める」「SNSに書き込む」などが上位に挙がっており、過度な要求になっていないか、伝える場として適切かなどを意識する様子がうかがえます。しかし、「謝罪を求める」「納得するまで説明を求める」といった項目にも一定の回答が集まっており、何が正当な要求かの判断には個人差があることも示されました。
2026年10月には改正労働施策総合推進法が施行され、カスハラ防止のための対策がすべての事業主に義務化されます。企業には相談窓口の整備や対応方針の明確化が求められますが、今回の結果からは、客側にも「伝え方や伝えてよい場面」と「伝える際に控えるべき言動」の両方を意識することがより一層求められることが示されました。カスハラ対策を「客の声を遠ざける仕組み」にするのではなく、客が誠意をもって意見を伝え、店側はその意見をサービスの改善につなげられる仕組みにしていくことが、企業、そして顧客側にも求められていくでしょう。今回の調査結果は、我慢するか強く主張するかの二択ではなく、社会全体が「伝え方の作法」を探っている段階にあることを示唆しています。
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