介護業界の深刻な人材不足と「なんじょう苑グループ」の挑戦
介護業界は全国的に深刻な人材不足に直面しており、「2025年問題」として警鐘が鳴らされてきた労働力不足は、今や現実の危機となっています。沖縄県内でも人材確保は最重要課題です。このような状況の中、沖縄県南城市に本社を置く日南株式会社が運営するデイサービス・住宅型有料老人ホーム「なんじょう苑グループ」は、介護業界の新しいスタンダードを築くべく、働き方改革に挑戦しています。
「なんじょう苑グループ」では、「給与水準の向上」や「柔軟な勤務形態」といった待遇改善を継続的に実施してきました。これらの施策が職員の定着や満足度へどのように影響しているかを検証するため、2025年11月に職員向けアンケート調査を実施しました。
調査概要
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調査期間:2025年11月23日〜11月30日
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調査対象:なんじょう苑グループで働く介護・看護職員
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有効回答数:53名
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調査方法:Googleフォームによる匿名のオンラインアンケート
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質問項目:15問(やりがい、離職意向、キャリア意識、入職理由など)
主要な調査結果
1. やりがい実感率が81.1%
「現在の仕事にやりがいを感じていますか?」という質問に対し、「強く感じている」が34.0%、「やや感じている」が47.2%と、合計81.1%の職員がポジティブに回答しました。これは、2023年のHELPMAN JAPAN調査(https://helpmanjapan.com/article/13074)における全国平均51.2%の約1.6倍にあたる高い数値です。

やりがいを感じる瞬間の上位は以下の通りです。
| 順位 | やりがいを感じる瞬間 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 利用者から「ありがとう」と言われた時 | 66.0% |
| 2位 | 利用者の笑顔を見た時 | 62.3% |
| 3位 | ご家族から感謝された時 | 58.5% |
| 4位 | 給与が上がった時 | 58.5% |
| 5位 | 自分のスキルが向上したと感じた時 | 50.9% |
職員からは「発語ができない利用者様に、ありがとうと手を握って言ってもらえた事が、涙が出るほど嬉しかった」(50代・リーダー)や、「人生の先輩たちとの関わりで自分の学びになることも多く、自分の成長にも繋がる仕事です」(40代・管理職)といった声が寄せられています。
2. 入職の決め手は「職場の雰囲気」が半数近く
入職を決めた理由(複数回答)では、「職場の雰囲気が良さそうだった」と「通勤距離が近かった」がともに47.2%で1位でした。また、「給与水準が高かった」が37.7%、「勤務時間・シフトの柔軟性」が32.1%と続いています。入職前のイメージと実際の職場環境が一致していることが、定着率の高さにも寄与していると考えられます。業界課題である低賃金への対応が、採用面でも明確な差別化につながっています。

3. リーダー昇進への意向 ― 「責任の重さ」が躊躇の壁に
リーダー(主任・管理職)への昇進については、「希望する」が30.2%、「希望しない」が26.4%という結果でした(「どちらとも言えない」30.2%、「すでにリーダー・管理職」32.1%)。

昇進を希望しない理由としては、「責任が重すぎる」(12名)、「業務量が増えすぎる」(8名)、「現場ケアに専念したい」(7名)が上位を占めました。職員がリーダーを増やすために会社に求める施策としては、「リーダー手当の増額」(46.2%)、「リーダーの業務負担軽減」(38.5%)、「マネジメント研修の充実」(36.5%)が挙げられています。魅力を高めながら負担感を下げるという両面からのアプローチが必要であることが明確になりました。
4. 67%が「沖縄ならでは」の良さを実感
「沖縄ならではの介護・看護の良さや特徴があると思いますか?」という質問に対し、67%が「ある」と回答しました。職員からは、「急な休みが出てもお互いさまだからと協力してくれるスタッフが多い」(40代・管理職)、「子どもの保育園から呼び出しがあっても皆さん嫌な顔せず対応してくれます。働くお母さんにとって、とても温かい職場です」(30代・一般職)といった声が寄せられています。沖縄特有の「ゆいまーる(助け合い)精神」や「いちゃりばちょーでー(一度会ったら兄弟)」という地域文化が、温かい人間関係と支え合う職場環境を自然に生み出している一因かもしれません。

5. 職員が考える「介護業界の発展に必要なこと」
人材流入を増やすためには「給与水準の向上」(69.2%)、「働きやすい職場環境(人間関係・設備など)」(50.0%)が重要だと考えられています。また、長く働き続けるためには「給与の継続的な向上」(69.2%)、「職場の人間関係の良さ」(53.8%)が不可欠であることが示されています。この結果は、給与水準の向上が人材確保と定着、イメージ改善に直結することを示唆しています。
職員満足度(やりがい)が高まった3つの成功要因
今回の調査結果から、職員満足度の高さには以下の3つの要因が大きく貢献していると考えられます。
1. 業界水準を上回る給与体系
「なんじょう苑グループ」では、沖縄県内の業界平均より10%高い給与の提供を目指し、実践することで優秀な人材の確保と定着を実現しています。職員の約7割が「給与の向上」を最重要課題と捉える中、精神論に頼らない報酬設計が持続可能なモデルの土台となっています。
2. 期待と現実が一致する職場環境
47.2%の職員が「職場の雰囲気が良さそうだった」と答えて入職し、実際に働き始めてからも「人間関係の良さ」や「お互いさまの精神」を評価する声が多数寄せられています。入職前後のギャップがないことが、高い定着率に直結していると言えるでしょう。
3. 沖縄文化という「見えない強み」も後押し
「ゆいまーる精神」のもと、温かみのある職場環境が形成されており、これは文化として自然に職場に根付いたものだと感じられます。67%の職員が沖縄ならではの良さを実感しており、この文化的土壌こそが、他地域では模倣しにくい独自の強みとなっています。
今後の取り組み|沖縄から全国へ、新しい介護モデルを発信
「なんじょう苑グループ」は、今後も職員が安心して成長できる基盤づくりを優先します。短期的な取り組みとしては、新入職員向けメンタープログラムの開始、リーダー手当の大幅見直しと明確な昇進基準の策定、リーダー業務の効率化、キャリアパス説明会の定期開催、給与体系の継続的な見直しを予定しています。
中長期的には、組織としての持続的な成長を目指し、マネジメント研修の体系化や多様なキャリアコース(現場スペシャリスト・教育担当・管理職など)の整備を進める計画です。また、介護機器の導入による身体的負担の軽減、定期的なアンケートによる継続的な改善も実施していきます。これらの取り組みで確立した「沖縄発の介護モデル」を、県内外の介護事業者へのノウハウ共有も含め、メディアや行政機関と連携しながら全国へ発信していく考えです。
日南株式会社 代表取締役 新垣憲良氏のコメント
今回の調査で、8割を超える職員がやりがいを感じているという結果に、大変励まされたと新垣氏は述べています。これは、職員一人ひとりが利用者様と真摯に向き合い、質の高いケアを提供してきた成果だと考えているそうです。
介護業界は「3K」というネガティブなイメージを持たれがちですが、実際の現場は異なるとのこと。利用者様の「ありがとう」という言葉やその笑顔が、職員にとって何よりの原動力になっていると言います。しかし、「やりがい」だけで職員に頑張ってもらうのは間違っているとし、職員の69.2%が「給与の向上」を最重要課題として挙げたことを真摯に受け止め、適正な報酬があってこそ職員が安心して長く働き続けられる環境をつくっていくと表明しています。
リーダー昇進への躊躇についても、「責任が重すぎる」「業務量が増えすぎる」という声を受け止め、リーダー手当の大幅増額と業務負担の軽減に取り組むとのことです。現場のケアに専念したい職員には、その道を極めるキャリアパスも用意し、多様な働き方を支援していく方針です。
沖縄ならではの文化を活かした介護モデルを確立し、全国32万人不足という課題の解決に、沖縄から貢献していきたいと新垣氏は締めくくっています。

会社概要
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社名:日南株式会社(なんじょう苑グループ)
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所在地:沖縄県南城市大里大城2005-1
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代表者:新垣 憲良
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設立:2014年(なんじょう苑グループの開設)
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事業内容:有料老人ホーム、訪問看護、訪問介護、通所介護等の運営




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