ビジネストークセッション概要
本セッションでは、Gold受賞企業である株式会社ライフデザイン(福祉/介護)、株式会社大和工務店(建設)、株式会社キースト(小売)の3社が登壇し、「はたらく人ファースト」の取り組みや、HR領域におけるAI活用などをテーマに、各社の具体的な活動事例が紹介されました。多様な業種にわたる各社の取り組みを通じて、組織づくりのヒントや示唆が得られる機会となりました。
「従業員を解き放て」— はたらく人ファーストの本質
常見氏は、各社の取り組みを「愛と勇気に満ちたプレゼンテーションだった」と総評し、特に印象的なキーワードとして「従業員を解き放て」を挙げました。マネジメントとは、人を「管理する」のではなく、本来の力を発揮できるように「解き放つ」ことであると述べられました。Gold受賞企業3社は、徹底した「負の解消」と「はたらく人ファースト」によって、現場主体の組織運営を実現している点が共通しており、大変参考になったとのことです。

HR領域におけるAI活用
AI活用は単なる業務効率化にとどまらず、「人が本来向き合うべき仕事に集中するための手段」として、各社で実装が進んでいます。
福祉業界のライフデザインでは、記録業務などの事務作業が現場の大きな負担となり、残業の要因にもなっていました。そこでAIツールを導入し、事務作業を大幅に削減した結果、8時間勤務から7時間勤務への短縮を実現しました。今後はシフト管理などにもAI活用を広げ、より持続可能な働き方を目指しているとのことです。
建設業の大和工務店では、ベテラン人材の知識やノウハウをAIに蓄積し、若手育成に活用する取り組みを進めています。職人気質の強い現場でのノウハウ伝承やコミュニケーションの難しさが課題でしたが、AIを介在させることで知識共有のハードルを下げ、世代を超えたスキル継承の可能性を広げています。
これらの事例を受け、常見氏は、AI活用の本質について次のように述べられました。AIは人の雇用を奪うものではなく、人がより価値を生む仕事に集中するための手段です。また、AIによって業務の一部が代替されることで、これまで人が担っていた「作業」が減り、意思決定や調整といった業務が中心になる可能性にも言及されました。その結果、「仕事の負担は軽くなったが、やりがいが薄れる」といった新たな課題が生じるケースもあると指摘されています。
さらに、AIの活用が評価指標として過度に求められることで、「AIを使うこと自体が目的化する」「AI活用を強要する風潮(AIハラスメント)」といった問題が生まれている現状にも触れられました。重要なのは、AIを導入することそのものではなく、人間が何に価値を発揮するのかを再定義することであると強調されています。各社が実践するように、現場の具体的な課題に即した形でAIを活用し、人間らしい仕事との最適な役割分担を模索していくことが、これからのHR領域に求められています。

エンゲージメントサーベイの社内浸透と活用方法
エンゲージメントサーベイの活用において重要なのは、「スコアの高さ」そのものではなく、その背景にある要因をどう捉えるかです。
大和工務店では、従業員一人ひとりが「自分たちで会社をつくっている」という当事者意識を持てる組織づくりを推進した結果、エンゲージメントスコアは継続的に向上しています。サーベイの結果自体は社内に共有せず、あくまで「定点観測」として活用し、点数は組織の変化の兆しを捉える指標として位置づけている点が特徴です。
一方、キーストでは、トップダウンとボトムアップを組み合わせた運営を実践しています。最初は一部のメンバーに権限を委ね、そこから徐々に組織全体へと主体性を広げていくことで、「自分たちが会社を動かしている」という意識を醸成してきました。こうした積み重ねが、組織への愛着や成長実感の向上につながっているとのことです。
これらの事例を受け、常見氏は、サーベイ活用の本質について次のように指摘されました。スコアに一喜一憂するのではなく、「何に満足し、何に不満を感じているのか」を丁寧に分析することが重要です。さらに、給与や福利厚生を改善しても満足度が上がらないケースがある一方で、「思う存分力を発揮できる環境」や「ルールが守られ、公平性が担保されている状態」といった要素が、満足度を大きく左右することにも言及されました。
また、従業員の中には、自身の不満や課題を言語化できないケースも多く存在します。そのため、サーベイの数値だけでなく、日々のはたらきぶりや現場の様子を観察することも重要な手がかりになるとしています。サーベイは単なる「結果」ではなく、組織改善のヒントが詰まった「宝の山」です。特にネガティブな声こそ、改善の起点として前向きに捉えることが、組織の進化につながると強調されました。

働き方の改善について
働き方の改善において重要なのは、制度の導入そのものではなく、現場の実態に即した形でどのように運用し、成果につなげるかです。
小売業のキーストでは、これまで長時間労働や連続勤務が当たり前とされてきた業界構造を見直し、シフトをデータ化しました。連勤制限などのルールを徹底することで、無理のない勤務設計を実現し、その結果、売上111%を維持しながら、実労働時間を30%削減することに成功しています。「休み方を変えることで、『仕事が好き』という気持ちの純度を守る」という考え方が、生産性向上にもつながった好例です。
建設業の大和工務店では、労働時間の制約が強まる中で、「いかに短い時間で価値を生むか」に着目しました。全社員に対して管理会計を開示し、予算管理も担わせることで、従業員一人ひとりが経営視点を持つ組織へと転換しています。また、マルチスキル化を推進し、自ら判断し行動できる人材の育成を重視することで、指示待ちではなく、現場が主体的に動く組織づくりを進めています。
福祉業界のライフデザインでは、慢性的な人材不足という課題に対し、採用手法の見直しだけでなく、マーケティングやDXの導入を積極的に推進しています。FAX文化の見直しなど、業界に根強く残る慣習にも踏み込み、業務効率の改善と働きやすい環境づくりを同時に進めているとのことです。単なる自社改善にとどまらず、業界全体のスタンダードを変える取り組みへと発展している点が特徴です。
こうした各社の実践に共通しているのは、「働き方を変えること」を目的にするのではなく、「はたらく人の状態を起点」に設計している点です。
常見氏は、企業主導で効率化や制度改革を進めるあまり、従業員に対して一方的に「もっと、はたらくことができる状態」を求めるだけでは、本質的な改革とは言えないと述べられました。重要なのは、従業員を「労働力」としてではなく、一人の生活者として捉えることです。育児や介護、健康、さらには自身のキャリアや人生設計など、仕事の外側にある現実とどう向き合うのか。また、「もっとはたらきたい」という意思を持つ人と、「無理なくはたらきたい」という人が共存する中で、どのようにバランスを取るのか。企業には一律の正解を押し付けるのではなく、“ホンネ”に向き合いながら最適な落としどころを設計することが求められます。制度や仕組みだけでなく、企業としてどのようなスタンスを取るのか。それを曖昧にせず、言語化し続けることが、これからの組織運営において重要であると述べられました。

関連情報
「はたらく人ファーストアワード2025」の受賞結果については、以下のURLから詳細をご覧いただけます。
また、「はたらく人ファーストアワード2026」のエントリーも現在実施中です。
はたらく人ファーストアワードとは
「はたらく人ファーストアワード」は、ミイダス株式会社と朝日新聞社が共催し、「はたらく人」一人ひとりを「ファースト」に考える姿勢を大切にする企業を称えるアワードです。従業員を大切にしている企業の取り組みを発信することで、すべての企業において、より「はたらく人ファースト」な働き方を推進することを目的としています。このアワードを通じて、誰もが自分らしく輝ける職場づくりを目指し、より良い社会の実現に貢献していくとのことです。
中途採用サービス『ミイダス』について
『ミイダス』は、採用・転職におけるミスマッチを減らし、入社後の活躍までを支援する採用・転職サービスです。主に中小企業を対象に「採用力」を高める支援を行っています。「採用力」とは、単なる採用活動の効率化だけでなく、企業の魅力を高める力であると定義されています。この「採用力」を軸に企業価値を高める「採用強化ブランディング」を推進しています。

『ミイダス』では、独自の視点から生まれた「4M2K」フレームワークに基づき、人材の採用から定着までの課題を明らかにし、その解決までをサポートする機能を提供しています。

関連する『ミイダス』サービス:
「コンピテンシー診断(特性診断)」を使った採用については、こちらから資料をダウンロードできます。
ミイダス株式会社の公式HPはこちらです。





コメント