AI時代における人的資本経営の新たな視点:カギは「判断が育つ仕事の設計」
近年、人的資本経営への関心が高まり、多くの企業で開示が進み、リスキリングや1on1、管理職研修といった取り組みが定着しつつあります。しかし、学習機会が増えても「任せられる人が増えない」「難しい仕事が特定の人に集中する」といった現場の違和感が拭えない現状があります。
リクエスト株式会社が公開したレポート「優れた人的資本経営の定義 ― なぜ、優れた人的資本経営は『判断が育つ仕事の設計』に行き着くのか?」は、この違和感の正体を、精神論ではなく仕事構造の問題として捉え直しています。

現場で人が育たない理由:仕事の「前例型」への傾倒
本レポートによると、多くの企業は働き方改革や効率化、IT化などを誠実に進めてきた結果、仕事が「前例型」に傾き、現場で判断が育つ経験が残りにくくなったと指摘しています。33.8万人・980社を対象とした業務経験データの分析では、企業の82%で仕事の中の判断経験が減少し、58%で上司確認頻度が増加し、64%で前例依存度が上昇していることが明らかになりました。
これは、判断の必要性そのものが低下したわけではありません。顧客や案件、現場の状況に応じた進め方の変更が求められる仕事は依然として多く存在します。にもかかわらず、仕事の進め方が前例確認や上司確認に戻りやすくなっていることが、人的資本経営が進んでも現場での育成実感が弱い根本的な理由であると説明されています。
施策の不足ではなく「仕事設計の不足」
レポートでは、この問題の根源を「施策の不足」ではなく「仕事設計の不足」に見出しています。制度を整えたり、研修を増やしたりすることは重要ですが、それだけでは人が育ち、組織の対応能力が高まるまでには届きにくいという見解です。人的資本経営を真に機能させるためには、人に残る判断が仕事の中で育ち、組織の力へと変わるよう、仕事そのものを設計する必要があると提言しています。
AI時代に人に残る中核は「判断」
AIが知識検索や情報整理、既存事例の参照といった定型的な処理を代替しやすくなる中で、人に残る中核は「単なる知識そのものではなく、知識や事実を踏まえて、何を確認し、何を重視し、どう進めるかを決める判断」であると整理されています。顧客差、案件差、現場差、関係者差を踏まえて進め方自体を変えなければならない仕事は、依然として人が担うべき領域です。
したがって、人的資本経営の次の論点は、「何を学ばせるか」ではなく、「人に残る判断が仕事の中で育つように設計されているか」へと移行するべきだと、本レポートは明確に示しています。
人的資本経営の着手点
レポートでは、人的資本経営を次の段階へ進めるための具体的な着手点を三つ挙げています。
- 自社の仕事を、手順で進める仕事と、条件差に応じた判断が残る仕事に分けること。
- 判断が残る仕事について、誰が何を判断しているかを見える化すること。
- その判断に必要な事実確認、任せ方、振り返り方を設計対象として定めること。
これらの点を定めない限り、人的資本経営は開示や制度整備としては進んでも、事業の中で人が育ち、判断できる人が増え、組織の対応能力が高まるところまでは進みにくいと指摘しています。
レポートの概要と対象読者
本レポートは全29ページ、約29,500文字で構成されており、「優れた人的資本経営の定義」「なぜ人が育ちにくくなったのか」「AI時代に人に残る中核は何か」といった問いに具体的に答えています。
特に、以下のような方々におすすめの内容です。
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人的資本経営を進めてきたものの、現場で育成実感が弱いと感じている経営者。
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研修や1on1を増やしても、判断できる人材が増えないと感じている企業。
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AI時代における人材育成の再設計が必要だと考えている経営層。
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制度整備だけでなく、事業の中で人が育つ構造まで踏み込みたい方。

リクエスト株式会社について
リクエスト株式会社は、「より善くを目的に」を掲げ、980社・33.8万人の働く人のデータに基づいた組織行動科学®を基盤に、組織における思考と行動が「なぜ起こり」「なぜ続くのか」を事業環境と経験から解明し、より善く再現する支援を行っています。






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