現代社会の課題と持続可能性への転換
大阪・関西万博2025が掲げるテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」は、私たち一人ひとりがどのような未来を創るべきかを問いかけています。1980年代以降の新自由主義を基盤とした効率追求は、経済的繁栄をもたらした一方で、格差の拡大や地球環境への深刻な影響といった側面も顕著になりました。持続可能な未来を築くためには、私たちの考え方そのものを見直す必要があると考えられています。
近年、SDGsやESG経営が注目されていますが、これらを誰かに押し付けられた課題や一時的な流行として捉えるのではなく、自らの内発的な動機に基づいて実践することが本質的な変化をもたらす鍵となると言えるでしょう。企業が「持続可能性」や「社会的責任」を語る際、その真価は、単なる表面的な取り組みに留まらず、未来を本気で創ろうとする意志にかかっています。
リベラルアーツによる深い洞察
このような内発的な動機を育むためには、経営者自身が時代を超えた英知に触れ、自らの頭で深く考える力を養う必要があります。その土台となるのがリベラルアーツです。リベラルアーツは、哲学や文学、歴史といった分野を通じて人間の本質を問い直し、時間と空間を超えた人類の英知に触れる学びを提供します。その学びは、現代の複雑な課題に対して深い洞察と新たな視点をもたらしてくれるでしょう。
この理念を実践する取り組みの一つとして、一般社団法人日本アスペン研究所で行われている「古典と対話」によるリーダーシップ研修があります。25年にわたり多くの経営者が受講しており、古今東西の古典を題材に対話を重ねることで、短期的な利益や効率性に囚われるのではなく、人間としての本質的な問いを考える時間を提供しています。このような学びを通じて、経営者たちは「何が正しいのか」、「何が価値あるのか」を自ら問い続ける力を育み、それが未来への指針となることが期待されます。
共助経営の実践と新たな経済システム
また、経済同友会では、新公益連盟、インパクトスタートアップ協会とともにプラットフォームを設立し、「共助資本主義」と「共助経営」という考え方のもと、パーパス(存在意義)と共感に基づき、企業が社会課題の解決に貢献する仕組みづくりを進めています。企業の持つリソースやイノベーションを活かし、ソーシャルセクターと協働することで、社会全体の持続可能性を高める取り組みです。こうした活動の中で、未来に必要とされる新たな経済のあり方が模索されています。

「いのち」への敬意と謙虚さの再認識
さらに最近では、「人間もまたヒトという生命種の一つである」という謙虚さの重要性が高まっています。人間中心主義に陥りがちな私たちですが、実際には自然の中で「いのちを与えられている存在」であることを忘れてはなりません。私たちが呼吸する空気、水、そして食べ物のすべてが地球という大きな生命システムからもたらされているという事実に、もっと深く感謝する必要があります。このような認識は、人間が「いのちの一部」であることを思い出させ、地球全体を視野に入れた意思決定を促してくれるでしょう。
いのち会議が描く未来
いのち会議は、このような根源的な問いを共有し、未来の方向性を探る場として非常に重要な意義を持っています。ここでは、生命そのものに立ち返り、経済や技術、環境といった具体的なテーマの枠を超えて未来を探ることが求められます。そうした場を通じて、私たちは単に知識を共有するだけでなく、「いのち」を軸に新たな社会のビジョンを描き、具体的な行動へとつなげるべきだと考えられています。
大阪・関西万博の経験を通じて、日本が世界に向けて示すべきは、単なる技術や経済的な強みだけではありません。それ以上に、未来を生きるすべての「いのち」に対する深い敬意と謙虚さを基盤とした価値観が示されなくてはならないでしょう。
いのち会議は、未来の世代にどのような価値観を示してみせるべきか、多様な人々との対話を通じて問い続けていきます。





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