ダイバーシティ推進の理想と現場の現実
調査によると、ダイバーシティに関する一般的な受容意識は6割以上と高水準です。しかし、価値観の異なる同僚との協働にストレスを感じる人は約半数にのぼります。特に、理念には賛成しつつも職場でストレスや抵抗感を抱える「ダイバーシティ葛藤派」が39.4%と最も多いことが確認されました。



ダイバーシティ推進における「壁」
施策の「空回り感」と目的の「ズレ」
ダイバーシティへの抵抗感を高める最大の要因は「ダイバーシティ施策の空回り感」でした。従業員の約2~3割が「表面的な世間体を整えているだけ」「理想と現実との間に大きなギャップがある」「他社の模倣に見える」といった意識を抱いています。


また、推進目的の認識にもズレが見られます。人事・経営層は「働きがい向上」や「組織活性化」を重視する一方、従業員は「労務リスク防止」や「企業イメージ向上」と受け止める傾向がありました。

属性・価値観の多様化と葛藤
本調査では、表層的な多様性を示す「属性のダイバーシティ」(育児や介護、障害者といった多様な属性の人材の存在)と、深層的な多様性を示す「価値観のダイバーシティ」(多様な考え方の人材の存在)の2指標を用いて分析が行われました。

多変量解析の結果、これら双方のダイバーシティが高いほど「ダイバーシティ葛藤派」の発生を有意に高めることが確認されました。特に価値観のダイバーシティが「低め」から「中層」へ移行する段階で、葛藤派の割合が約20ポイント急増しています。組織のダイバーシティが高まるほど、「仕事の不公平感」や「過度な気遣い感」「関係性コンフリクト」を高める傾向も見られます。

成果につながる新たな視点「関係のダイバーシティ」
調査では、従来の属性や価値観の多様性に加え、人材同士の「つながり」と「つながり方」の多様性を示す「関係のダイバーシティ」という新たな概念に着目しました。これは、ネットワークの数と密度、コミュニケーションの頻度と豊かさという4つの構成要素で定義されます。

分析の結果、「関係のダイバーシティ」が高い組織ほど、ダイバーシティへの一般的受容度を高めつつ、個人的抵抗感を下げる傾向が確認されました。また、チームパフォーマンスが高く、イノベーション活動を促進し、「はたらく不幸せ実感」を有意に下げる効果も見られています。これは、他のダイバーシティ指標と比較しても際立った傾向です。



関係のダイバーシティを高める施策
「関係のダイバーシティ」を高めるのは、ダイバーシティ推進の施策数そのものよりも、「ネットワーク/コミュニティ施策数」であることが示されました。有効な施策は「広げる・太くする・かき混ぜる・つなげる」の4類型で整理されています。


調査結果からの提言
本調査は、これまでのダイバーシティ議論が「どんな人がいるか」という頭数に偏り、人材が「どのように関わっているのか」という関係性の視点が欠落していた点を指摘しています。既存のダイバーシティ推進は、現場と会社双方に摩擦を生み、形骸化している現状があります。

「関係のダイバーシティ」という新たな観点を導入することで、多様な人材を揃えるだけでなく、彼らが組織の中でどのようにつながり、協働しているのかという問いに答えることができるでしょう。これにより、ダイバーシティ施策と議論をアップデートし、組織のウェルビーイングやイノベーション活動を促進することが期待されます。
調査結果の詳細については、以下のURLからご覧いただけます。
本調査は、従業員3,000名と企業500社を対象に、2025年10月15日から10月20日にかけてインターネット定量調査として実施されました。





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