AI時代に企業競争力を左右する「判断できる人材」の育成
生成AIの急速な普及により、企業では「これから人間の仕事は何になるのか」という問いが繰り返し議論されています。AIは要約、文章作成、資料作成、分析、問い合わせ対応など、多くの業務を担えるようになりました。その一方で、企業の仕事の中には、AIや前例、マニュアルでは対応できない領域が残っています。それが「判断」です。
しかし、組織行動科学®を提供するリクエスト株式会社の33.8万人・980社の分析結果からは、企業の82%で仕事の中の判断経験が減少しているという事実が明らかになりました。このような状況がなぜ起きているのかを理解するためには、「判断」という能力の特性を整理する必要があります。

「判断」は教えることができない
判断は、知識のように教えることで身につくものではなく、仕事の中で経験を通じて形成される能力です。33.8万人・980社の分析結果に基づき、その特性を詳しく説明します。
1. 判断は「教えることができる知識」ではない
教えることができる仕事には、正解や手順を言語化できるという共通点があります。例えば会計処理や商品知識、システム操作、業務手順などは、「知識 → 説明 → 再現」という形で伝えることが可能です。
しかし、判断は本質的にこれらとは異なります。判断とは「何を優先するのか」「どのリスクを取るのか」「どのタイミングで決めるのか」「どの価値を重視するのか」を状況ごとに決める行為です。唯一の正解が存在しないため、知識として整理し、手順として教えることはできません。
2. 判断は「状況の中」で行われる
判断は常に、具体的な状況の中で発生します。BtoB・BtoBtoC営業の例では、顧客の状況、案件条件、組織事情、リスクの大きさ、時間制約などが毎回異なります。一見似ている案件でも、判断の前提条件は必ず異なります。そのため、「この場合はこうする」という固定的なルールとして教えることはできません。判断とは、状況を読み取り、その場で決める行為なのです。
3. 判断は「経験によって形成される」
判断では、顧客価値、コスト、リスク、組織事情、将来への影響など、複数の要素を同時に比較しながら決定します。これらの要素のうち、どれを重く見るかは単なる知識では決まりません。それは、成功経験、失敗経験、修正経験を通じて形成される感覚だからです。判断力は、「経験 → 振り返り → 調整 → 判断精度向上」というプロセスの中で育つ能力です。
4. 判断は「理解」ではなく「行為」
判断は、単に頭の中で理解することではありません。実際に決める行為そのものです。自分で決め、結果を受け、うまくいかなかった場合に修正する。こうした経験を繰り返すことで、判断の質は少しずつ高まります。つまり判断とは、理解ではなく、実践の中で鍛えられる能力であり、説明だけで習得することはできないのです。
企業で減少する「判断経験」とAI時代の仕事
本来、判断力は仕事の中で自然に育つものでした。しかし近年、多くの企業で業務の標準化、マニュアル化、IT化、働き方改革による効率化といった変化が起きています。その結果、多くの仕事は状況ごとに考えるのではなく、前例を適用すれば進められる仕事へと変化しました。このような教えることができる仕事は、まさに生成AIが担えるようになり始めています。
AIが得意なのは知識処理、パターン適用、手順作業です。一方でAIが苦手なのは、状況ごとの優先順位の判断、リスクの取り方の判断、価値の選択、不確実な状況での意思決定です。つまりAI時代に人間に残る仕事は、判断が必要な仕事と言えるでしょう。
企業に必要なのは「判断経験の設計」
判断は教えることができない能力であるため、企業には、判断を伴う仕事を意図的に設計し、実践と振り返りを通じて経験を積ませるという取り組みが必要になります。これからの人材育成は、知識教育から判断経験の設計へと変わっていく必要があります。AI時代に企業競争力を左右するのは、判断できる人材をどれだけ育てられるかにあると言えます。
こうした背景から、リクエスト株式会社では、社員が判断経験を積める仕事を設計する方法を体系化し、管理職向け講座「判断できる部下を増やす」を公開しました。本講座では、従来のマネジメント研修のように「教え方」や「指導方法」を学ぶのではなく、仕事の構造そのものを整理し、判断経験が育つ仕事を設計する実践的な方法を学びます。具体的には、自社業務の中で判断が必要な仕事を整理し、判断が止まるポイントを診断、部下が経験すべき判断を明確化し、判断経験が育つ仕事構造を設計することで、組織の判断力を高めます。

判断できる人は、働き方改革が定着した組織では自然には育ちません。判断経験が生まれる仕事を設計した組織で生まれるものです。AI時代に企業競争力を左右するのは、判断経験が生まれる仕事を設計できるかどうかにかかっています。

リクエスト株式会社について
リクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は、「より善くを目的に」を掲げ、33.8万人の働く人のデータに基づいた組織行動科学®を基盤に、7つの研究機関が980社を支援している企業です。組織行動科学®は、組織で働く人々の思考と行動が「なぜ起こり」「なぜ続くのか」を事業環境と経験から解明し、より良く再現する手段です。
-
コーポレートサイト:https://requestgroup.jp
-
代表取締役 甲畑智康:https://requestgroup.jp/profile





コメント