背景:東証が求める経営管理体制と資本効率の重要性
東京証券取引所(以下「東証」)は2023年3月31日、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社に対し「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。この要請は、以下の3段階を継続的に実施することを求めています。
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自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し取締役会で現状を分析・評価すること(現状分析)
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改善に向けた方針や目標・具体的な取り組みを取締役会で検討・策定し投資家に分かりやすく開示すること(計画策定・開示)
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計画に基づき経営を推進し、開示をベースに投資者と積極的に対話すること(取り組みの実行)
東証が特に重視しているのは、自社の資本コストを把握し、ROIC・ROEがそれを上回っているかを比較・可視化し、その状況を開示・対話することです。つまり、本質は「ROIC・ROEという資本収益性の実績値を資本コストと比較できる経営管理体制を構築する」ことにあります。
要請から約3年が経過した2026年2月末時点で、プライム市場の93%、スタンダード市場の51%の企業が何らかの開示を実施しており、特にプライム市場では71%が初回開示後に内容をアップデート済みです。しかし、PBR1倍割れの企業やROE8%未満の企業は依然として高い水準にあります。
こうした状況を受け、東証は2026年4月28日に要請内容をアップデートし、「経営資源の適切な配分」を中心とした投資家の期待や取り組みのポイントを新たにまとめました。また、コーポレートガバナンス・コードに基づく独立社外取締役の選任や、2025年7月から義務化されたIR体制整備など、経営の実効性を高めるための関連制度も段階的に強化されています。
これらの動きから、企業にはこれまでのPL中心の経営管理に加え、BSやCFまで含めた管理体制と、ROIC・ROEを資本コストと比較・開示できる体制整備が、制度面からも強く求められています。
資本効率指標導入のきっかけと課題
Diggleの自社調査でも、こうした制度対応の実態が裏付けられています。資本効率指標を導入・目標化したきっかけを尋ねたところ、主な回答は「東証要請」(37.5%)、「株主・投資家からの要望」(34.4%)、「同業他社の取り組みを参考にした」(25.0%)、「親会社・グループ会社からの要請」(21.9%)など、いずれも外部からの要請や影響を理由とするものでした。一方で、「以前から継続して管理しており、特定のきっかけはない」という自主的な取り組みは12.5%にとどまり、多くの企業にとって資本効率指標への対応が外部からの要請を起点に始まっている実態がうかがえます。

また、企業経営では、日々の利益(PL)だけでなく、在庫・設備・売掛金といった資本の使われ方(BS)、さらに実際の現金の動き(CF)までを継続的に把握することが、資本効率を正確に評価するために不可欠です。しかし、Diggleが上場企業を中心に実施したヒアリングでは、多くの企業がExcelに依存した管理を行い、手入力や更新漏れのリスクを抱えていることが明らかになりました。
さらに、経営企画や財務・経理といった本社側と、事業部長クラスの現場側とで、日常的に見ている数字の粒度にギャップがあることも浮き彫りになっています。経営企画やCFOは全社の資本効率を追いかける一方で、現場の事業部長は日々の売上や利益(PL)の管理に多くの時間を割いており、自部門にどれだけの資本が投じられているかを示すBSやCFまで把握する機会が少ない傾向にあります。この結果、経営側が資本効率の向上を求めても、現場側には判断材料が届かず、両者の目線が揃わないという課題が存在します。
この「目線が揃わない」実態は、Diggleの自社調査でも顕著に表れています。資本効率指標を目標として管理していない非経営層の回答者のうち76.2%が、その理由として「経営層から求められていない」を挙げました。一方で、資本効率指標を運用している非経営層の回答者に経営層との連携状況を尋ねたところ、52.4%が「経営層は重視しているが、事業部への浸透は十分ではない」と回答しています。

新機能の概要:三表連動から資本効率まで一気通貫でシミュレーション
今回リリースされた新機能では、以下の3つの機能が実現されます。

- PL・BS・CFの三表連動によるシミュレーション
PL・BS・CFの三表を連動させることで、メンテナンスコストを削減し、キャッシュの動きまで含めたシミュレーションが可能になります。これまで個別に管理・更新する必要があったBSやCFを、PLの予実管理と同じ枠組みの中で自動的に反映できます。 - 勘定科目より細かい単位で指標を自動計算
勘定科目単位よりも細かい項目で資産を管理し、売上や利益を個別の資産に紐づけることができます。これにより、事業や商品ごとの資本効率性を具体的に把握できるようになります。 - 事業部レベルまでブレイクダウンした指標ツリーでの予実管理
全社のROICを、事業別・商品別・拠点別の資産回転率までブレイクダウンしたツリー構造で管理できます。経営企画やCFOだけでなく、事業部の現場担当者が自ら実行可能な粒度で指標を追いかけ、改善に向けたアクションにつなげられる設計です。
想定される導入効果
本機能の導入により、企業は次のような変化を期待できます。
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BSやCFの管理に追加工数をかけることなく、資本効率までを含めた経営管理体制を構築できます。
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経営陣が求めるROIC・ROEといった指標を、事業部が日々コントロールできる具体的な数字にブレイクダウンして共有できます。
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属人化していたシミュレーションや表計算ソフトへの依存から脱却し、指標改善に向けた分析・示唆出しを組織全体で行えるようになります。
Diggleの自社調査では、資本効率指標の運用における課題として「データ収集に時間がかかる」(41.2%)が最も多く挙げられ、次いで「B/S計画の作成が難しい」(38.2%)が続きました。これは、データを「集める・作る」段階でのハードルの高さが、資本効率指標の定着を阻む要因になっていることを示唆しています。

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関連リンク
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日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」(2023年3月31日): https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html
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東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」通知文書(2023年3月): https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/cg27su00000041xg.pdf
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東京証券取引所「『資本コストや株価を意識した経営』に関する4年目の取組み」(2026年4月7日 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議第27回資料): https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004vj2-att/t13vrt0000013v5w.pdf
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日本取引所グループ「『資本コストや株価を意識した経営』に関する要請のアップデートについて」(2026年4月28日): https://www.jpx.co.jp/news/1020/20260428-01.html
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日本取引所グループ 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議資料(2025年10月21日): https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20251021/05.pdf
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東京証券取引所 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議資料(2025年9月2日): https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/um3qrc0000022flw.pdf
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Diggle自社調査「資本効率指標の活用についてのアンケート」: https://corp.diggle.jp/news/20260826-2





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