AIで業務効率化が進んでも「現場が忙しいまま」の理由とは?
AIの導入により、多くの業務が効率化され、一つひとつの作業は以前よりも速く進むようになりました。しかし、それにもかかわらず、「現場は依然として忙しいままだ」「新規事業や事業変革に人材を移すことができない」といった声が聞かれることがあります。この課題に対し、組織行動科学®に基づく研究・教育開発を行うリクエスト株式会社が、その構造を整理した図解とセルフチェックを公開しました。

AIで生まれた時間が「既存業務の改善」に戻る構造
AIによって作業時間が短縮されても、多くの企業では現場の忙しさが変わらない現状があります。これは、社員の意欲や主体性の問題ではありません。責任感があり、自ら仕事を見つけて動ける人は、AIで生まれた時間を現在の仕事の品質向上や、これまで手薄だった改善活動に使う傾向があるためです。
具体的には、顧客対応をさらに丁寧に行ったり、分析をより深く掘り下げたり、品質を一層高めたりといった活動に時間が充てられます。これらはどれも価値のある仕事ですが、結果として「空いた時間は現在の仕事の追加改善へ戻る」ことになり、新しい目的へ人材を移す余力は自然には生まれないのです。

「作業余力」を「戦略余力」へ転換する重要性
本リリースでは、作業時間の短縮によって生まれた余力を「作業余力」と定義しています。一方、その余力を人、役割、予算として新しい目的へ移せる状態を「戦略余力」と呼んでいます。作業余力が生まれただけでは、戦略余力にはなりません。

AIによって同じ仕事を短時間で終えられるようになっても、社員には現在の顧客対応、事業目標達成、品質維持、部門での成果といった責任が残っています。この状況で時間だけが生まれると、社員が余力を現在の仕事へ戻すのは合理的な行動です。
人材を新しい事業へ移すには、組織として「現在の仕事をどこまでで止めるか」「何をやめてもよいか」「誰を現在の責任から外すか」「人材を送り出した部門の目標をどう変えるか」「新しいテーマの初期段階を何によって評価するか」といった意思決定を行う必要があります。これらは現場社員が個人の判断で決められることではありません。
新しい価値を生む仕事の3つの状態
新しい事業を立ち上げる際、多くの場合、目的自体が明確ではありません。「新規事業をつくる」という方針があっても、「誰のどの状態を変えるのか」「何を問題として扱うのか」「何を新しい価値とみなすのか」が定まっていないことがあります。このような状況で不足しやすいのは、目的に向かって動く人材ではなく、目的そのものがまだ明確ではない状態を前に進める仕事です。
仕事を次の3つの状態に整理することで、この課題を考えることができます。
- 曖昧さを前に進めるクリエイティブ: まだ決まっていない仕事、例えば「誰の、どの状態を変えるのか」「何を問題として扱うのか」「何が変われば価値が生まれたと言えるのか」といった出発点から、現場の事実や相手の反応を手がかりに、対象・目的・問題・価値基準を仮置きし、小さく確かめながら形にする仕事です。ここでいうクリエイティブとは、明確ではない現実から次に確かめるべき仮説と判断材料をつくることを指します。
- 改善: 目的と問題が定まっている仕事を、より良く、速く、効率的にする仕事です。
- 正解実行: 問題・方法・基準・完了条件が定まっている仕事を、正確に再現する仕事です。
AIは、目的や問題が定義された後の改善や正解実行を大きく加速させます。しかし、新しい事業の入口には、その前段にある「目的を形成する仕事」が必要とされます。問題は、現実が変わっているにもかかわらず、目的や価値基準を見直す上流の仕事へ戻れないことにあるとされています。

AIで生まれた余力が新しい目的へ移っているかを確認する9問セルフチェック
自社でこれら3つの仕事を分け、AIで生まれた余力を新しい目的へ移せる状態になっているかを確認するため、9問のセルフチェックが公開されています。このセルフチェックは、組織を統計的に判定したり、個人の能力や意欲を評価したりするものではありません。経営層、事業責任者、管理職、現場社員の回答差から、最初に確認すべき事実を見つけるための目安として使用できます。
回答方法
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同じ事業・部門・テーマを一つ決め、経営層、事業責任者、管理職、現場社員が相談せずに別々に回答します。
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「はい」は2点、「一部そうである」は1点、「いいえ」は0点として採点します。

3つの領域(A・B・C)を別々に採点
9問は、以下の3つの領域に分かれています。合計点ではなく、各領域の点数と、設問ごとの回答差を見ることが重要です。
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A|作業余力: AIで何が減ったかを把握し、やめる仕事を決め、生まれた余力を人・役割・予算として別の目的へ移せているか。
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B|目的形成: 現在の目的をより良くする「改善」と、誰の何を変えるかから考える「目的を形成する仕事」を分けられているか。
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C|人材移動: 人を新しいテーマへ移すだけでなく、元の担当・会議・目標・責任や、送り出す部門の目標・評価も変えられているか。
各領域は6点満点です。5~6点であれば条件は比較的整っていますが、立場による回答差がある場合は確認が必要です。3~4点の場合は運用に差があり、0~2点の場合は個人の努力ではなく組織構造から確認する必要があります。

セルフチェック後の事実確認の重要性
点数が低いからといって、すぐに「AI活用が不足している」や「新規事業を担う人材がいない」と結論づける必要はありません。点数は、最初にどの事実を見るべきかを示す目印です。実際に減った仕事、生まれた時間の使い道、残っている責任、適用されている評価基準を確認することが重要です。
特に、A「作業余力」が高い一方で、B「目的形成」またはC「人材移動」が低い場合、AI導入や業務効率化自体は成功していると考えられます。しかし、生まれた余力を新しい目的へ移すための組織判断が追いついていないことが課題であると判断できます。
同じ組織内でも、経営層、事業責任者、管理職、現場社員では、見えている事実と負っている責任が異なるため、点数の低さだけでなく、どの設問で回答が分かれたかを確認することが重要です。

回答が分かれた場合は、どちらかの認識が間違っていると決めつけるのではなく、それぞれが何を見てその回答を選んだのか、現在どの目標や責任を負っているのか、何が変われば回答が変わるのかを確認することが推奨されています。これにより、問題が「AIで生まれた余力の把握」にあるのか、「目的を形成する仕事」にあるのか、「人と責任の移動」にあるのかを切り分けることができます。
最初に行うこと
結果が出ても、すぐに制度や研修を検討する必要はありません。まず、回答差の大きい設問を一つ選び、関係者が見ている事実を確認します。
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Aで回答が分かれた場合:どの業務時間が実際に減ったか、減った時間に何の仕事が追加されたか、実際にやめた仕事は何かを確認します。
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Bで回答が分かれた場合:そのテーマの目的はすでに決まっているか、「誰の何を変えるのか」は誰の言葉になっているか、何を価値とみなすかを既存KPI以外で確認しているかを確認します。
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Cで回答が分かれた場合:移動した人に残っている会議、顧客、目標、責任は何か、人材を送り出した部門の目標は変更されたか、新しいテーマの初期段階を何によって評価しているかを確認します。
これらの確認を通じて、問題が社員の意欲にあるのか、仕事や組織の構造にあるのかを区別することができます。
どの事実から確認すべきか定まらない場合は、リクエスト株式会社 判断デザインラボラトリーへ問い合わせることも可能です。回答者の立場ごとのA・B・Cの点数、回答が分かれた設問番号、現在人を動かしたい事業・テーマの3点を伝えることで、最初に確認すべき事実を整理する手助けをしてくれます。

リクエスト株式会社 代表取締役 甲畑智康氏のコメント
代表取締役の甲畑智康氏は、AIが定義された仕事を速める一方で、新しい事業の起点は「まだ名前のない顧客の困りごとや価値を、仕事として形にすること」にあると述べています。現在の責任を残したまま空いた時間だけを渡せば、責任感のある人材は現在の仕事をさらに良くするだけで、人が動ける状態は自然にはつくられないのです。必要なのは、曖昧な現実から新しい目的を形成する仕事、形成した目的をより良く実現する仕事、有効性が確認されたものを正確に再現する仕事を分け、つなぐことです。この9問のセルフチェックが、人材を移せない理由を個人の意欲ではなく、仕事の構造から見直すきっかけとなることを期待しています。

リクエスト株式会社について
リクエスト株式会社は、「より善くを目的に」を掲げ、累計980社・33.8万人(2026年6月時点)の働く人の業務経験データに基づく組織行動科学®を基盤に、8つの研究機関を擁する企業です。組織で働く人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、事業環境・歴史・経験から解明し、より善く再現するための研究と教育開発を行っています。


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会社名:リクエスト株式会社
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代表取締役:甲畑 智康
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所在地:東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
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本件に関するお問い合わせ:リクエスト株式会社 判断デザインラボラトリー E-mail:request@requestgroup.jp





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