奈良市、AI専門部署開設から1年で大きな成果を発表
奈良市は、全国に先駆けて令和7年4月1日に設置したAI専門部署「AI活用推進課」の開設から1年間の取り組みと実績を報告しました。この1年間で、目覚ましい進化を遂げるAI技術を業務効率化や市民サービス向上に活用し、具体的な成果を上げています。令和8年度からは、行財政改革推進機能も統合し、「AI・行革推進課」として再編されています。
AI活用推進の背景
奈良市がAI活用を進める背景には、人口減少による働き手不足や市民ニーズの多様化といった社会情勢の変化があります。これらの課題に対応するため、テクノロジーの力を最大限に活用し、業務効率化と市民サービスの向上、そして持続可能な行政経営を目指しています。
令和7年度の主な取り組みと成果
職員リテラシーの向上と生成AI活用
AI活用推進課を中心に、全職員へのアンケートやヒアリングを通じてニーズを把握し、生成AI利活用ガイドラインの改訂を重ねました。また、安全かつ適切な生成AI利用環境を構築し、全職員が汎用的に利用できる生成AIサービスを導入しました。
人材育成にも力を入れ、外部機関との連携や「AI使ってみようデー」などのハンズオン研修、管理職向け研修を実施。その結果、研修後の課長級職員の生成AIサービス利用率は38%から74%へと大幅に上昇しました。
生成AIによる業務効率化
文章の作成、要約、校正といった業務を中心に、生成AIサービスを活用した効率化が進められました。令和7年度下半期には、約17,200時間(約17.5人月分)の業務時間削減が実現したと報告されています。具体的な活用シーンとして、以下の例が挙げられています。
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議事録作成
会議の録音を生成AIにアップロードし、指示を出すことで、文字起こしや要約が瞬時に可能になりました。
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説明資料作成
制度の要綱をもとに、スライド構成や図表、想定問答まで生成AIが作成をサポートします。
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国通知の読み込み
大量の通知も、生成AIに内容を分かりやすく説明させることで、迅速な把握が可能になりました。
次世代クラウド電話「Zoom Phone」の導入
令和8年3月16日からは、次世代クラウド電話「Zoom Phone」を導入しました。本庁・西部出張所の全ての電話機1,030台を置き換え、AIによる通話要約機能も搭載されています。これにより、災害時でも場所を選ばずに業務継続が可能となり、市民の利便性向上と窓口負担軽減に貢献しています。
また、コールセンターの入札に先行してシステム入札を行った結果、コールセンター受託事業者の入札価格が3分の1に抑えられ、年間約5,000万円の大幅な削減につながりました。

市民サービスへのAI活用
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市公式ホームページ AIチャットボット
令和7年8月7日から、市公式ホームページにAIチャットボットを導入しました。これにより、24時間365日対応の問い合わせが可能となり、市民の利便性が向上しています。半年間の実績をもとに換算すると、年間のべ22,000人が利用し、約46,000件の質問に対応しているとのことです。

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AI×相談(傾聴型AI)
普及率の高いLINEプラットフォームにおいて、対話を通じて利用者の心情を汲み取る「傾聴型AI」の実証実験を実施しました。デジタル技術を用いた24時間365日体制で、「寄り添い型」のアプローチにより、相談に対する心理的ハードルを下げ、適切な公的支援への橋渡しを目指しています。
「おやこよりそいチャット奈良」(子育て世代向け)と「シニアよりそいAI『AIちゃん』」(シニア層向け)のプロジェクトが進められています。AIと人のハイブリッドで、孤独感の解消や必要な支援への接続が期待されます。
児童相談業務へのAI活用
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児童相談業務におけるタブレット活用
職員が家庭訪問時に専用タブレットを活用することで、その場で過去の記録確認、内容メモ、AIによる記録自動要約が可能になります。
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複雑な児童相談所シフト作成
一時保護所の複雑なシフト作成業務において、AIが最適なシフトを作成することで、作業時間が年間117時間から13時間へと大幅に短縮されました。捻出された時間は、子どもたちへのより手厚いサポートに充てられるとのことです。
新たなインフラ構築
個人情報を扱う業務での利用に向け、自治体専用ローカル環境とガバメントクラウド環境の両輪による、安全かつ効率的な利用環境の構築を検証中です。これにより、部署や業務間でのAIデバイド(AI活用の格差)解消を目指しています。

今後の展望
AIの活用により、市役所業務は大きく変革すると予想されます。ルーティンワークはAIに任せ、職員は「現場」と「対話」に注力し、複雑な悩みや温かい支援が必要な市民へのケアを最大化する未来像が描かれています。

具体的には、窓口業務ではAIが手続きを一括で洗い出し、ワンストップで案内するようになるでしょう。定型審査業務は書類の自動読み取りから通知書作成まで一括処理されると予測されます。また、AIが市民に合わせたライフイベントを予測し、手続きや制度をプッシュ型で通知するなど、市民サービスの高度化が進むと期待されています。














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