経営・人事課題と人事部の実態
経営課題は「人材と組織の変革」が中心
経営課題の上位には、「人材の確保・採用競争への対応」「人材育成・リスキリング・最適配置」「DX・AIを活用した業務変革・新たな価値創出」が集中しています。これは、人と組織の変革が現在の経営全体の課題の中心となっていることを示しています。

人事課題の重心は「定着・活躍支援」へ
人事課題では、「従業員満足度・エンゲージメントの向上」「最適な人員配置」「従業員の定着/離職防止」が上位に挙げられています。これは、人材を確保するだけでなく、既存人材の活躍、配置、定着をいかに高めるかが人事課題の中心になっていることを示しています。

人事部の関与度と課題
人事部は新卒・中途採用や人事考課・評価の調整といった実務運用では高い関与度を示しています。しかし、経営戦略やDX・AI推進といった戦略領域への関与は低水準に留まっています。人事部の内部課題としては、「人員不足(45.2%)」「専門性不足(44.6%)」「企画構想力の低さ(39.3%)」などが上位に挙がっており、人事部門が「攻め」よりも「守り」の機能に偏りがちな状況が明らかになりました。


戦略人事の実現と企業業績
戦略的パフォーマンスと財務パフォーマンス
人事部の「戦略的パフォーマンス」が高い企業は、低い企業と比較して、直近1年間で売上高・利益率ともに増加した割合が高いことが確認されました。人事部が経営戦略へ関与することと企業業績との間に正の関連性があることが示されています。

戦略的パフォーマンスを高める5つの要素
人事部の戦略的パフォーマンスにポジティブに影響を与える要素として、「職務範囲の脱・属人化」「処遇の市場化」「タレントデータの一元化」「自律的キャリア選択」「社内/外の雇用流動化」の5つ(5 Essentials)が特定されました。特に、職務記述書の整備や社内キャリアパスの明確化がパフォーマンス向上に大きく貢献するとされています。


これらの要素の実態を見ると、「管理職の等級の属人性」が半数以上の企業で該当する一方、「昇降格基準の明確な共有」や「評価のメリハリ」などは2~3割の企業しか実現できていない状況です。

戦略的パフォーマンスを阻害する要因
人事部の戦略的パフォーマンスを阻害する要因としては、「人事部門の企画構想力の低さ」「事業部門とのコミュニケーション不足」「人事部門全体に共通するビジョンや目的がないこと」が挙げられています。これらの課題は、全体で3~4割の企業で見られます。

人事領域の最新トレンド
AI活用と人員構成の変化
AI活用度が高い企業ほど、「一般事務職」を削減する見込み(42.5%)とする一方、「デジタル・IT系」は増員見込み(56.3%)とする傾向が顕著です。人事部自身のAI日常活用は約4割に留まり、まずは文書作成・要約・確認、評価コメント作成、研修資料作成など、既存業務を支援する領域から活用が広がっています。


賃上げ動向と判断基準の変化
賃上げ実施・予定企業は2022年調査から73.0%へ増加しました。賃上げの判断要素では、「業績・予算の達成度」の重要性が低下する一方、「戦略的人材の採用強化」など、人材確保を意識した判断が重視される傾向が見られます。


働き方改革の浸透と管理職負担の課題
フレックス勤務やノー残業デーなどの働き方改革関連施策は広く普及していますが、約4割の企業が「管理職への負担増」を弊害として挙げています。働き方関連施策の実施が進むほど、管理職の負担感も増加する傾向が見られました。


調査結果からの提言
労働力不足が進む中で、企業の経営課題は「ヒト」に集中しており、人事課題の重心は既存人材の「定着・活躍支援」へとシフトし、「攻めより守り」という姿勢がより鮮明になりつつあります。AIの組織普及や次世代リーダー育成といった経営戦略的な領域への人事部の関与は限定的であり、ビジネス戦略に人事が取り残されつつある側面が見られます。
本調査からは、人事が戦略的にパフォーマンスを発揮するためには、「処遇の市場化」「職務範囲の脱・属人化」「タレントデータの一元化」「自律的キャリア選択」「社内/外の雇用流動化」という5つの要素が重要であることが抽出されています。一方で、ビジョンや企画構想力の欠如、事業部門との連携不足がパフォーマンスを押し下げています。
人事部門が取り組むべきことは、自社の事業戦略を見据えた上で、以下の点が挙げられます。
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まず自らの組織目的を問い直し、戦略人事を推進していくための指針となる人事ポリシーを定めること。
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HRBPを主軸に事業戦略と人材戦略を再接続すること。
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人材データの一元化による配置・育成の高度化を進めること。
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経営とのコミュニケーションを密にし、自社ビジネスへの感度を高めること。
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従業員の報酬と市場価値との乖離を埋めていくこと。
AIが経営戦略にますます組み込まれていく中で、「人と組織」の意思決定が人事の外側で進んでいけば、人事部が存在感を失っていく可能性もあります。こうした取り組みを通じて、人事部門が実務運営の担い手ではなく、経営と事業の成長を支える戦略パートナーへと進化していくことが期待されます。
調査概要と詳細情報

本調査結果の詳細については、以下のURLをご覧ください。
※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。





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