働き方改革の成果と副作用:残業減少の一方で「職場の低体温化」が進行
株式会社パーソル総合研究所は、「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」を実施し、その結果を発表しました。この調査は、働き方改革が本格化した2018年から2019年頃を起点に、正社員の残業時間の変化、その要因、そして働く個人や職場への影響を分析したものです。
調査では、長時間労働の是正による一定の成果が確認された一方で、「職場の『低体温』化(仕事への没入・挑戦機会の低下)」や「部下の『成長錯覚』化(成長実感と実際の育成状況の乖離)」といった副作用も明らかになりました。

働き方改革がもたらした成果
働き方改革は、主に残業削減に関する取り組みを指しており、具体的な成果が確認されています。
残業時間の減少と業績への影響
メンバー層では2018年と比較して月間残業時間が平均6.7時間、上司層では9.0時間減少しました。この残業時間減少は、企業業績や組織パフォーマンスの悪化を示唆する影響は見られませんでした。

また、労働時間の増減希望に関する調査では、「もっと働きたい」と回答した層はわずか7.1%にとどまり、現状維持または労働時間を減らしたいと考える人の割合が圧倒的に高いことが分かりました。

個人のウェルビーイング向上
長時間労働の是正は、働く個人のウェルビーイングにポジティブな影響を与えています。
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バーンアウト(燃え尽き症候群)の改善: メンバー層・上司層ともにバーンアウトの傾向が減少しました。

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睡眠時間の増加: 平日の睡眠時間は、メンバー層で月あたり5.3時間、上司層で月あたり4.3時間増加しました。

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人生満足度の上昇: 人生満足度(ウェルビーイング)も、メンバー層・上司層ともに上昇傾向であることが確認されました。

働き方改革がもたらした副作用
一方で、働き方改革の進展とともに、職場には新たな“しわ寄せ”が生じていることも明らかになりました。
職場の「低体温化」の進行
企業の働き方改革によって、労働時間の適正化が進む一方で、「時間管理の厳格化」「仕事の過密化(短時間で成果を出すプレッシャー)」「業務の無機質化(業務をこなすだけになった)」「関係の希薄化(職場の一体感が失われた)」といった変化を感じる意識が確認されました。

これらの変化は、社員が仕事へ没入したり、新たな挑戦をする機会の減少につながり、「職場の低体温化」が進行していると考えられます。働き方改革の歪みが強い組織ほど、社員の没入・挑戦機会を妨げている傾向が見られ、上司のマイクロマネジメントが増加傾向にあることも示されています。また、AI関連の学び意欲を除く全ての項目で、学びに対する意識が低下していることも明らかになりました。



上司の課題シフトと「部下の成長錯覚化」
上司が抱える業務上の課題も変化しています。2019年には「自身の業務量増加」や「学習時間不足」が中心でしたが、2026年には「働き方改革への対応増加」「部下の育成不足」「部下のメンタル問題対応増加」といったマネジメント上の課題が中心となりました。

さらに、「部下の成長錯覚化」も進行している可能性があります。メンバー層の成長実感は増加している一方で、上司は部下の育成不足を実感しており、メンバーと上司の間で「成長・育成認識の捻じれ」が生じていることが示唆されています。メンバーはマイクロマネジメントを受けるほど成長を実感する傾向があるものの、上司はマイクロマネジメントを行うほど部下の育成不足を感じています。

「自律的成長」を遂げる層は人事評価が高い傾向にあるのに対し、マイクロマネジメントを介した「補助輪付き成長」層は平均的な評価にとどまる違いも確認されました。また、人事評価は2018年よりも中心化傾向が進んでいます。

仕事の「無意味さ」と没入・挑戦の阻害
メンバー層の62.3%が「仕事に意義を感じない」と回答しており、「仕事の無意味さ(ブルシット・ジョブ感)」が仕事への没入や挑戦を阻害する傾向が確認されました。この背景には、働き方改革に伴う業務の無機質化や関係の希薄化が影響している可能性が示唆されています。

職場の「熱さ」を取り戻すために
長時間労働の是正という面では、働き方改革は着実に前進してきました。しかし、その一方で「職場の『低体温』化」や「育成・成長の捻じれ」といった見過ごせない副作用も表面化しています。
これらの副作用を乗り越えるためには、無意味な仕事を減らすことを前提とし、「(目の前の)仕事への没入」と「(新たな)仕事への挑戦」を促すアプローチが重要であると提言されています。具体的には、成果基準の明確化、裁量の担保、キャリアへの期待を伝える「“つたえる”型の上司マネジメント」などが挙げられます。また、働く時間に依存しない案件アサインや目標管理の見直し、部下とのキャリア相談ができる関係構築も重要です。

労働力不足が深刻化する現代において、「労働時間の削減」が「職場の活力低下」につながる構造は解消されるべきです。限られた時間の中で職場の「熱さ」をいかにして生み出すかという問いに正面から向き合い、仕事の進め方や組織運営、育成のあり方を再設計していくことこそが、日本の働き方改革における次の段階だと言えるでしょう。
本調査結果の詳細については、パーソル総合研究所のウェブサイトをご覧ください。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workstyle-reforms/








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