創造性教育の再定義と合格者数非公表の背景
創立者たちは、戦後の日本で生活の豊かさは取り戻せても、感性の豊かさが失われつつある状況を「よく観て」いました。そこで、フィールドワークの姿勢と多様な価値観を尊重するリベラルアーツの姿勢を、アートを通じて育成することを目指し、御茶の水の私邸を創造性教育の場へと変えたのです。
しかし近年、美術教育の現場では、技術の習得や進学の実績といった指標が過度に重要視される傾向にあり、創造のプロセスに対する評価が後退しているといいます。特に美術系の予備校業界全体では、授業料割引の競争や合格者数の誇示が際限なく行われ、教育の質よりも数値が優先される状況が顕在化していると指摘されています。
この状況が教育を歪める原因であると判断した学園は、御茶の水美術学院において、本年度より合格者数の公表を行わないことを決定しました。これは単なる広報方針の変更ではなく、教育を「競争の指標」から切り離し、数値による比較競争の枠組みから離脱するという意思決定です。学園は、進学とは必ずしも難関校への到達ではなく、多様性を尊重し、学ぶ者が自ら選んだ道に進むことに価値があると考えています。

各教育機関の新たな指導方針
御茶の水美術学院
創立当時の構想に立ち返ると共に、美術系大学が総合型選抜に重きを置き始めた状況を踏まえ、受験指導を「アートをリベラルアーツとして学ぶ」教育へと再定義します。「よく観ましょう」の精神に基づいて、現実に立脚した「創造性」を育成し、情報や技術が高度化する現代に不可欠な「問いの設定力」と「意思決定力」の会得を軸にカリキュラムマネジメントを行い、創造性教育機関としての機能を強化していきます。また、本年度より合格者数の公表を廃止します。
御茶の水美術専門学校
サーキュラーエコノミーの実現に向けて、アート、デザイン、マーケティング、サイエンスなどを融合させた課題解決型学習(PBL)を実践し、職業教育を再定義します。学生が持続可能性と経済活動を分断せず統合的に捉えられるよう、同じ志を持つ企業や団体をステークホルダーとして位置付け連携し、社会が学生を育てる環境を整えます。こうした活動を通じて持続可能な世界を追求する教育機関としての機能を堅固なものにします。
アートジム
アートを特権ではなく、すべての人々に開かれた文化の基盤として再定義します。年齢・職業・経験に関わらず創造活動に参加できる環境の構築を軸に、文化を消費、或いは消失させてしまう構造そのものからの転換、脱却を促す生涯教育を再設計します。世代を問わず創造性を更新し続ける場として、個人の内面的な価値創造を支援し、視覚化することで「文化を創造」し、発信までをも担う機能を持つ教育機関に進化させていきます。

持続可能な社会への貢献と教育の独立性
学校法人服部学園は、国連グローバル・コンパクト(UNGC)およびジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)の会員として、その理念に賛同し、持続可能な環境や社会の実現に向けた教育を推進しています。
教育は本来、市場や政策の要請に従属するものではなく、学ぶ者が自ら価値を創造し、未来に対して責任を持つ営みであるべきだと学園は考えています。文化を軽視し、効率性やコスト削減が優先される傾向が強まる現代において、短期的な成果は生まれても、人間の感性の豊かさは再び失われてしまうという懸念があります。文化が創造されず、発展しない社会では、持続可能な平和を築くことは困難であることも世界中で証明されています。
学園は、社会や政策環境が変化したとしても、多種多様であるべき教育機関のひとつとしての独立性を維持し、自らの思想に基づいた教育を継続することを宣言しています。今後、創造性教育を社会に実装するための具体的な取り組みを段階的に発表していく予定ですので、今後の展開にご期待ください。

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