取引先によって異なるセキュリティ運用の実態
調査ではまず、「貴社ではセキュリティ運用は計画的かつスムーズにできていると感じるか」を尋ねました。その結果、大手企業またはその関連会社と継続的な取引がある企業では7割以上がスムーズな運用を実感している一方で、一般消費者(BtoC)や公的機関・官公庁との取引が中心の企業では、スムーズな運用を実感していない担当者が多いことが判明しました。

スムーズなセキュリティ運用を実感している企業に、その要因を尋ねたところ、「わからないことを、電話やチャットですぐに相談できるため」(45.7%)が最も多く、「高機能な自動化ツールを導入し、手動での対応を減らしているため」(38.0%)、「経営層が重要性を理解し、必要な予算を承認してくれているため」(33.9%)と続きました。専門知識や時間がなくても運用できる体制が、スムーズさに繋がっていることがうかがえます。

基礎対策の徹底と専門知識の理解度
スムーズなセキュリティ運用を実感している企業ほど、基本的なセキュリティ対策を実践していることも明らかになりました。「ウイルス対策ソフトの導入」や「OSやソフトウェアの定期的なアップデート」といった基礎的な対策が徹底できているかどうかが、運用全体に対する自信になっていると考えられます。
国が推進する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」については、中堅・中小企業との取引が中心の企業の約4割が具体的な対策に踏み切っているのに対し、大手企業との取引がある企業では情報収集段階にとどまっている割合が高い傾向が見られました。

また、セキュリティ専門用語の理解度についても調査が行われました。セキュリティ運用がスムーズだと「とても感じる」と回答した方の9割以上が専門用語を「理解できる」と回答した一方で、「まったく感じない」と回答した方では「理解できる」と答えた割合が約3割にとどまり、運用のスムーズさと専門知識の理解度が相関していることが示されました。

トラブル発生時の対応と新制度への自信
業務中にPCのセキュリティツールから不審な挙動の通知が届いた場合、約半数の担当者が「セキュリティツールのメーカーのサポート窓口へ連絡する」(28.5%)か「詳しい人に相談する」(25.9%)と回答しました。自力でマニュアル等を確認・調査する方は約4分の1にとどまっており、緊急時に専門家や窓口へ相談できるサポート体制の重要性が浮き彫りになりました。

新制度が開始された際に、取引先から自社のセキュリティ対策状況を問われて即答できる自信があるかという問いには、大手企業と取引がある企業では約7割が「自信がある」と回答しましたが、取引先が「中堅・中小企業」「一般消費者」「公的機関」となるにつれて、自信があると回答する割合は減少しました。取引先の属性によって、自社のセキュリティ状況を把握・説明できる体制に差が生じているようです。

セキュリティ運用が進まない理由とツールの課題
セキュリティ運用がスムーズにできていないと感じる担当者に、セキュリティ対策を後回しにする理由を尋ねると、「本業が忙しく、セキュリティ対策まで手が回らないため」(28.3%)が最も多く、「何から手をつければよいか、専門的な判断が難しいため」(27.7%)、「対策に必要な予算の確保や、経営層の承認が得にくいため」(23.7%)と続きました。兼務担当者が専門外の領域を判断し、経営層を説得して予算を確保することの難しさがうかがえます。
導入しているセキュリティツールについて「使いこなせていない」と感じる点としては、「セキュリティツールのログやレポートを読み解き、対策に活かす時間がない」(28.6%)、「セキュリティツールから通知がきたときに、『本当に危険かどうか』を判断するスキルがない」(26.8%)が上位を占めました。専門外の対応が担当者の負担になっていることがわかります。

新しいセキュリティツールの導入検討における懸念点としては、「セキュリティの専門知識がない担当者でも、正しく使いこなせるか」(47.9%)が約半数を占めました。これに「導入コストや月々のランニングコストが効果に見合うか」(39.2%)、「新しいセキュリティツールを導入することで、PCの動作が重くなるなどの支障が出ないか」(37.7%)が続きます。操作の難しさ、費用、業務への影響が主な懸念点となっているようです。

兼務担当者を救う「専門外の対応サポート体制」と「運用負荷の軽減」
今回の調査から、中小企業のセキュリティ運用は取引先の属性によって差があり、特に「何かあった際にすぐ相談できる体制」や「自動化ツールの導入」がスムーズな運用を支えていることが明らかになりました。一方、セキュリティ運用に課題を感じる企業では、専門知識の不足や時間的制約が大きな壁となっています。
今後、サプライチェーン強化に向けた新たな基準が導入されれば、セキュリティ要件はさらに厳格化すると予想されます。企業がセキュリティ対策を強化するためには、単に高機能なツールを導入するだけでなく、「専門知識がなくても操作できるか」「異常検知時に相談できる専門家のサポートがあるか」といった運用面での支援が重要になるでしょう。担当者の負担を軽減し、専門外をカバーしてくれる体制を構築することが、中小企業の持続的な成長と信頼確保に向けたカギとなると考えられます。
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