男性育休取得率、初の5割超え
厚生労働省の「令和7年度 雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は50.9%に達し、初めて5割を超えました。これは、法制度の整備に加え、企業や社会が育休取得を後押ししてきた成果と考えられます。男性育休は、一部の社員が利用する特別な制度から、より多くの人が利用する制度へと変化しています。

取得する人が増加した現在、企業には制度を設けて取得を促すだけでなく、社員が一定期間不在になっても業務が滞らず、復職後も育児と仕事を両立しながら活躍できる職場環境を構築することが求められています。取得率の向上と、取得を支えられる組織づくりを両輪で進める段階に入ったといえるでしょう。
若年層の約9割が育休取得を希望、約7割が「1か月以上」を希望
厚生労働省委託事業「共育(トモイク)プロジェクト」が公表した「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」では、子どもを持つことを希望する若年層の約9割が育児休業の取得を希望していることが判明しました。さらに、そのうち約7割が「1か月以上」の育休取得を希望しており、男性の5割超、女性の約8割が1か月以上の取得を希望する結果となっています。

これまでの企業では、男性育休について数日から2週間程度の短期間の取得を想定するケースが少なくありませんでした。しかし、今回の調査結果からは、若年層が希望する取得期間がより長期化していることが読み取れます。企業には、取得者本人への支援だけでなく、1か月以上の不在を前提として、業務の属人化解消、情報共有、業務配分の見直し、代替要員や周囲の社員への支援まで含めた体制整備が求められています。
会社選びで仕事とプライベートの両立を意識する若年層が約7割
同じく「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」では、若年層の約7割が、会社を選ぶ際に「仕事(キャリア)とプライベートの両立を意識している」と回答しました。

若年層にとって、育児休業制度の有無だけでなく、実際に制度を利用できるか、育児をしながら働き続けられるか、復職後もキャリアを築けるかが、企業を選ぶ際の重要な判断材料となっています。男性育休や両立支援を、既存社員のための福利厚生としてのみ捉えるのではなく、採用力や人材定着力を左右する経営課題として位置づける必要があります。
共育てを阻むのは制度不足だけでなく職場運営の課題
「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」では、子育てをする時期に希望する働き方を実現する上でハードルになりそうなこととして、「業務量」「長時間労働」「突発的な業務」「上司の理解」「勤務時間の柔軟な調整」が多く挙げられました。また、子育て中の人が企業や周囲に求めることとしても、「業務量の適正化」「上司・管理職の理解促進」「長時間労働・残業の削減」「制度を利用しやすい雰囲気づくり」などが多く挙げられています。


若年層が将来の両立に対して感じている不安と、実際に子育てをしている人が企業に求めている支援には、共通する項目が多く見られます。制度を整備するだけでは、「共育てできる職場」は実現しません。業務量が過大である、特定の社員に仕事が集中している、突発業務への対応方法が決まっていない、上司によって制度利用への理解に差があるといった職場運営上の課題に踏み込む必要があります。企業には、制度利用者本人だけを支援するのではなく、チーム全体の業務設計や管理職のマネジメントを変える視点が求められています。
共育てできる職場は、将来の管理職候補を育てる
同調査では、仕事と育児の両立に積極的に取り組みたい若年層は、若年層全体と比べて、「仕事と育児を両立できる環境があればキャリアアップしたいと思う」と回答した割合が21.9ポイント高いことも明らかになりました。

この結果は、両立を重視する人がキャリア意欲が低いという従来の認識とは異なります。両立できる環境があれば、より高い役割を担い、キャリアアップしたいと考えている人が多いことを示しています。両立支援は、社員に働きやすさを提供するためだけのものではありません。将来の管理職候補や中核人材が、育児期にも経験を積み、能力を発揮し続けられる環境をつくるための人材投資です。そのためには、管理職が制度を理解するだけでなく、業務の優先順位付け、チーム内の役割分担、適切な業務量の設定、突発的な休みに対応できる体制づくりを実践できることが重要です。
トモイクプロジェクト推進委員 大畑愼護氏のコメント

株式会社ワーク・ライフバランスで厚生労働省「共育(トモイク)プロジェクト」推進委員を務める大畑愼護氏は、今回の調査結果を受けて次のようにコメントしています。
「男性育休取得率が初めて50%を超えたことは、日本社会にとって大きな前進です。企業や行政が取得促進に取り組んできた成果であり、今後も取得率をさらに高めていくことが重要です。一方、今回の調査で特に注目したいのは、子どもを希望する若年層の約9割が育休取得を望み、そのうち約7割が1か月以上の取得を希望している点です。男性育休は、短期間休むための制度ではなく、育児の主体として家庭に関わるための期間として捉えられ始めています。」
大畑氏自身も3人の子どもの誕生時にそれぞれ1か月、2か月、1年間の育休を取得した経験があり、第三子の育休時には家族5人でフィジーに移住したといいます。長期間仕事を離れるためには、本人の意思や制度だけでなく、業務を共有し、周囲が支えられるチームづくりが不可欠であると実感したそうです。
「調査で挙げられた『業務量』『長時間労働』『突発的な業務』『上司の理解』は、いずれも制度だけでは解決できない課題です。取得率の向上とあわせて、誰かが一定期間不在でも業務が回り、復職後も育児とキャリアを両立できる組織をつくる必要があります。共育てできる職場づくりは、福利厚生ではありません。若手人材の採用・定着、将来の管理職候補の育成、そして組織の持続可能性に直結する経営課題です。今後は、取得人数や取得率だけでなく、業務設計や管理職のマネジメントまで含めて取り組む企業が、人材から選ばれると考えています。」
大畑愼護氏の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。また、大畑氏が育休移住の経験を語る育休移住.comも参考にしてください。
共育(トモイク)プロジェクトとは
「共育(トモイク)プロジェクト」は、共働き・共育ての推進に向け、職場や家庭におけるいわゆる「ワンオペ」の実態を変え、男女ともに誰もが希望に応じて仕事と家事・育児を両立し、「共に育てる」ことに取り組める社会を目指す、厚生労働省の広報事業です。特に企業へのアプローチを主軸として、雇用環境や職場風土の改善など、多くの企業が共育てしやすい環境づくりに積極的に取り組めるよう、普及啓発活動を展開しています。「共育て」とは、パートナー同士が協力し合って家事・育児に取り組むことを指します。共育(トモイク)プロジェクトの詳細はこちらで確認できます。
株式会社ワーク・ライフバランスについて
株式会社ワーク・ライフバランスは、2006年の創業以来、企業の業績向上と従業員のモチベーション向上を両立させる働き方改革を支援してきました。自治体や官公庁を含む3,600社以上の現場に寄り添い、残業30%削減と営業利益18%増加、あるいは残業81%削減・有給取得率4倍・利益率3倍といった成果を上げた企業の組織改革を支援するなど、「変化を定着させる改革」の実現に強みを持っています。株式会社ワーク・ライフバランスの公式サイトはこちらです。
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